本サイトでは、歩行や入浴、着替えといった日常動作に 介助が必要になったとき、できるだけ自宅で生活を 続けられるよう家庭内で支援することを「うち介護」と 呼んでいます。
うち介護の負担を減らす技術の紹介や、質問・相談のコミュニティ、介護にまつわる情報提供などの コンテンツを通し、日本の介護の未来を明るくして行こうという思いを込めて、本サイトを運営しています。
うち介護のつらくない続け方、賢いやり方の参考として。
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介護情報の集まるポータルサイトとして。
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母の思い出
母は昨年亡くなりましたが、20年ほど認知症でした。足腰も丈夫で、徘徊もせず、食べ物も皆とほとんど一緒の物を食べていました。さすがに亡くなる数ヶ月前は寝たきりになりましたが、それまではまったく手のかからない要介護者でした。いつも居間でおとなしくテレビを見ていました。
私は嫁いでいましたので、兄夫婦が面倒をみていました。丈夫な母でしたが、記憶だけが20年前でストップしていました。20年前以降のことはまったく覚えていません。私が夫婦で遊びにいくと、私の夫に「母ちゃんは元気か?」と聞きます。私が「母ちゃんは10年前に死んだ」と答えます。「ああそうか」と母は返事します。「父ちゃんは元気か?」と聞きます。私が「父ちゃんは12年前に死んだ」と答えます。「ああそうか」と母は返事します。10分ほどするとまた「母ちゃんは元気か?」と聞きます。それをずっと繰り返します。
5年前のある日悲しい事件が起きました。兄が仕事中の事故で亡くなってしまったのです。家中大騒ぎでした。翌日、兄の遺体が棺に入れられ帰ってきました。みんな泣きました。
すると突然、それまで無表情で座っていた母が「明、どうしたんだ。どうしてこんなんなちまったんだ。どうした明、どうした明」と泣き、兄の遺体を抱きしめ、すがりつき、泣きじゃくりました。そして1時間ほど泣き続け、また記憶喪失の世界に戻っていき、以前と同じ無表情になりました。
息子の死という衝撃的な事件が、母の記憶を呼び覚まし、認知症の記憶喪失の世界から現実の世界へと引き戻したのでしょう。
今は亡き母のそんなことを思い出しています。
人間って、不思議ですね。